武漢近況その10 (2009年10月)


建国60周年記念パレード雑感

 10月は晴天が続きました。今でも日中の気温は278℃と汗ばむほどです。ニュースでは、西の洞庭湖が干上がりそうなので三峡ダムの水門を開けたと報じていました。

少し前のことですが、101日の国慶節には、建国60周年記念パレードをテレビで楽しみました。朝10時から12時半まで延々2時間半も続きました。最初は閲兵式に続く、軍事パレードで徒歩隊列、装備隊列、航空編隊合わせて56隊列が行進しました。続いて市民パレードが始まり、36隊列に60台のパレードカー、6つのパフォーマンス隊で、なんと10万人が参加したそうです。パレードが通過する天安門広場には、4000人近くの軍楽隊、合唱団がおり、その後ろに、8万人のボランティアが整列し、マスゲーム、文字や絵を映し出しました。パレードも壮観でしたが、私にはこの人文字が不思議で、後で調べると49通りあったそうですが、様々なスローガンや絵模様をパレードに合わせて瞬時に変えていきます。もちろんコンピューターで制御しているのでしょうが、何種類ものボードや小道具の切り替えをどのように行ったのか、未だに分かりません。

 天安門上では、国家指導者達が並ぶ中、常に胡錦涛主席の隣に、江沢民前主席が立っているのが目に付きました。よく政治的な確執が噂される二人ですが、胡錦涛さんの余裕なのか、江沢民さんの巻き返しなのか、外からはよく分かりませんが、興味深い光景でした。日本の新聞には、この天安門上に村山元首相も立っていたと報じられていました。

 夜に入ると、天安門広場では大規模な祝賀パーティーが開かれ、オリンピックの開会式を髣髴させる豪華なマスゲームや花火、有名歌手達による歌謡ショウで盛り上がりました。パーティーの最後は、胡錦涛、江沢民両氏を始め、国家指導者全員が市民の輪に入り、全員で歌を歌ってフィナーレという粋なエンディングでした。この日、北京は丸1日祝賀ムードに包まれていました。学生達に聞くと、この記念パレードのために、軍人や市民ボランティア達は、半年も前から北京郊外の「閲兵村」と呼ばれる施設に缶詰となって、練習に明け暮れたとのことです。

 この祝賀パレードについて、日本のマスメディアの論調は、軍事的な脅威を挙げるものや、過剰な演出や動員を批判するものなどネガティブなものが多かったようです。しかし、私はよくここまできたものだという感銘を受けました。共産党政権になって60年、途中で大躍進や紅衛兵、四人組みなど様々な紆余曲折がありましたが、改革開放が成功し、今年はいよいよGDP世界第2位の大国へ成長するまでになりました。天安門の指導者達もしみじみと喜びを噛み締めていたのではないでしょうか。

 

両江ナイトクルーズを楽しむ

 国慶節の連休には、蘇州から卒業生が遊びに来てくれましたので、二人で武漢の市内を見て歩きました。中でも、両江ナイトクルーズはなかなかのものでした。両江とは、武漢を南北に流れる長江と、漢口と漢陽を分ける漢江のことで、ちょうど長江大橋の付近で合流します。武漢の人からナイトクルーズの評判を聞いていたので、余裕のある連休に試してみました。遊覧船の出る場所は武昌にはなく、漢口でしたので、早めの夕食を食べてタクシーで出かけました。乗船場所は武漢関埠頭と粤漢埠頭の二箇所ですが、タクシーの運ちゃんが強引に勧める武漢関埠頭から乗りました。8時半出発で、1時間半30元でした。あとで聞くと、粤漢埠頭は豪華船で食事付き100元以上するようです。

 船は長江を漢口沿いに下り、直に漢江へ入ります。川幅は狭くなりますが、その分両岸の建物が身近に迫ります。付近はマンションなどの高層建築がそびえ、色とりどりのイルミネーションで輝いていました。イルミネーションは時間によって色とパターンが変わる複雑なもので、それぞれの建物で工夫されており、飽きません。この電気代は誰が負担するのだろうかといらぬことが心配になったほどです。船は再び長江へ戻り、大橋の手前で折り返し、武昌側を進んで、漢口へ引き返します。漢口の税関ビル、漢陽の晴川閣、やや遠目に武昌の黄鶴楼がライトアップされて、浮かび出ていました。

 ナイトクルーズといえば、上海の外灘をめぐる黄浦江クルーズが有名ですが、両江クルーズもそれに引けを取りませんでした。むしろ、川幅が広い分こちらの方が勝っているかもしれません。大橋のこの付近は武漢の中心地ですが、それにしても川沿いに多くの高層ビルが連なっているのに改めて驚きました。武漢もどんどん開発されているようです。

 

テニス仲間の来漢

 この週末、日本のテニス仲間の先輩達が武漢を訪ねてくださいました。相模原近辺に在住する皆さんがフォーティラブという同好会を作って、毎週末コートを借りてテニスを楽しんでいます。私も会社勤務の時から参加していました。そのクラブが何と30周年を迎え、その記念行事でもないでしょうが、有志の皆さん6人がわざわざ武漢まで来てくださいました。34日ですが、始めと終わりは空港への行き来で終わるため、正味2日の武漢滞在となります。武漢での行程は先学期のIBM先輩方の武漢ツアーと同じようなセッティングにしました。1日目は市内観光で、湖北省博物館、戸部巷、黄鶴楼、漢口租界跡をめぐり、2日目は大学訪問、近隣の散策とさせていただきました。

 準備でたいへんだったのが、ホテルとレストランの予約でした。ホテルは当初、大学の招待所(ホテル)を予定しましたが、生憎、重要会議があるということで、部屋が全てふさがりました。大学の近くで、同じ予算のホテルを探したところ、幸い宿舎の近くに最近出来たビジネスホテルを見つけました。早々に部屋を確かめて予約はしましたが、中国に初めての方もいらっしゃるのに、現地のビジネスホテルで大丈夫かとやきもきしていました。

 レストランは、2日間で昼夜の4食ですが、1日目は、観光先で昼食を取り、夕食は前回も使った宿舎に近い大きなレストランに決めました。2日目をどうするかで迷いました。大学のレストランは重要会議で使えませんので、学生達を23人連れて、付近のレストランへ味見をして回りました。その結果、昼は重慶の火鍋屋、夜は最近出来て評判の土家族風地元料理の店に決めました。人数は先輩方が6人、こちらは同じ数の学生と私ですから、総勢13人前後とちょっとした人数です。日本のようにコース料理はないので、11皿と考えても13皿以上の料理を注文しなければなりません。前回の教訓から、今回は味見や予約でレストランに行った時、これはという料理を学生にメモをさせて置きました。おかげで当日、メモをみながらすばやく料理を注文できました。中華料理の名前は長くて、同じ料理でもレストランによって名前が違ったり、あるいは逆に、素材が名前になっていて、レストランによって調理方法が違ったりと、なかなか苦労します。

 今回もまた先輩達に無理をお願いして、大学で特別授業をしていただきました。皆さん豊富な経験と様々な職歴をお持ちで、学生達にとってたいへん有益な授業でした。観光や付近の散策でも11で学生に案内させました。学生達にしてみると、初めて多くの日本人と話せて貴重な体験をしたということと、言いたいことがたくさんあったのに少ししか話せなかったというもどかしさを感じたことが大きな収穫だったようです。毎回、いらしていただく先輩方には、観光をそっちのけで、学生達を訓練していただいているようで、なんとなく申し訳なく思っています。しかし、学生達と接していただくことで、現代の中国に触れて頂くことにもなるのではないでしょうか。

 来週からいよいよ11月に入ります。武漢の気温も急速に寒くなることでしょう。今年こそは紅葉の名所を探し当てたいものです。気候の変わり目で、健康にご留意ください。