新学期 2008−2009年度の後期学期は2月12日から始まりました。冬休みが明けて、9日に武漢へ戻りました。当初は、20℃近くもある暖かな天候が続き、快適でしたが、学期が始まった週末から雨が降り始め、何と3週間近くも降り続きました。気温が下がり、寒さに震えました。雨は武漢に限らず、上海や南京も含め、華中、華南一帯をおおい、やっと最近になって晴れ間が見えて、ホッとしています。 今学期は、1,2年の会話、3年の作文、4年の卒論指導と全学年を担当することになりました。しかし、授業時間は減って、週10コマと楽になりました。1,2年生は初めての担当なので、例によって民族を教えてもらいますと、全部で12民族。漢族が43%と多数で、地元の土家族が12%、後は、回族、満州族、壮族、蒙古族、苗族、朝鮮族、トン族、シェ族、水族、ヤオ族となりました。1年生は1クラス33人、2年生は2クラスで65人ですが、週1回の授業のため、名前と顔を覚えるのに苦労しています。 中国の春節 3年生の最初の授業で、春節という題で作文を書かせました。それらの作文から、最近の中国の春節を探ってみました。地域による相違と、学生の思い込みから、解釈がばらつきますが、次のようになります。まず、春節とは、旧暦の12月23日から1月15日、あるいは、旧暦の1月1日から15日までの期間を言います。12月23日は「祭竈」というカマドの神様を祭る日で、カマドをきれいにして、お供えをします。そして、一般にはこの日から春節の準備を始めます。翌日には墓参りにでかけ、墓を掃除してきれいにします。それから、春節の飾りや食べ物の用意をします。これを「年貨」と言い、町の人々は買い出しに出かけ、農村では、全て自分達で作るようです。この時期の商店街はちょうど日本の年末大売出しといった様相で、書き入れ時だそうです。家の門や玄関には赤い紙の上にめでたい句を書いた一対の「春聯」を貼ります。私の宿舎のドアにも学生が貼ってくれました。30日の大晦日には、朝早く起きて、家じゅうを掃除し、「年夜飯」の支度をします。「年夜飯」は「団円飯」ともいい、一家、あるいは、一族がそろって、1年の苦労をねぎらいながら、ご馳走を食べます。この「年夜飯」も最近ではレストランやホテルでの外食が増えて、人気の店では半年前から予約でふさがります。食後は皆で、日本の紅白歌合戦にあたるCCTVの「春節聯歓晩会」を見るのが定番のようです。そして、この晩は寝ずに、午前0時をまわった瞬間に競うように外へ出て、爆竹を鳴らします。 春節の1月1日を初一、2日を初二といい、初十五まで続くようです。それぞれに財神の日など、いろいろあるようですが、ここでは省きます。春節の料理は餃子が一般ですが、南方や広西省などは、粽を食べるようです。餃子のいくつかにそっとコインを入れて置き、これに当たると縁起が良いそうです。食事が終わると、子供達は「紅包、圧歳銭」といったお年玉をもらいます。また、この日から、親類縁者が互いに春節の挨拶に訪れます。これを「拜年」といい、初一は親族、初二は奥さんの実家へ、初三は親戚へと続きます。現代の中国では春節の法定休日は大晦日を入れて7日で、今年は1月25日から31日まででした。従って、会社や役所は2月1日から始まりましたが、一般には春節の終わりは初十五、元宵節までとされています。この日には、家に灯籠を飾り、「湯円」という白玉のような団子を食べて、花火をあげ、春節を終えるようです。 学生達の何人かは、子供の頃、春節になると新しい服が着れて、ご馳走が食べられるので、春節が来るのをわくわくしていたが、大学生になったら、わくわくしなくたったと書いていました。流行の服がいつでも買えて、時折、レストランでおいしい料理を食べられる現代の学生達には、日本と同じように、もう春節への感激が薄れてきているのでしょう。 ところで、学生の作文には、よく新年の決意が書かれています。昨年はあまり勉強しなかったが、今年こそはxxの資格をとるために頑張りたいとか、今年はもっと日本語を勉強しますなどややストイックな目標が並びます。私は、賀状などに努力とか頑張るなどを書くのは日本人のメンタリティーかと思っていましたが、こちらでも同じようです。 部屋が回る ちょうど先週の夜中、うなされて起きあがると、部屋全体が回転しています。後で知ったのですが、これを回転性めまいというのだそうです。初めての経験でしたので驚きました。寝れば治ると思い、寝直しましたが、翌朝目覚めても回転は止まりません。まわりが回るので、動けず、無理に動こうとすると吐き気を催しました。授業がなかったので、その日は1日寝ていましたが、翌日もまだ治まりません。この日は授業があるので、観念して、主任の先生に電話し、授業の休講と、病院の紹介を頼みました。 しばらくすると、国際交流所の先生と3人の学生達が宿舎に迎えに来てくれて、大学の車で武漢大学中南病院へ連れて行ってくれました。学生が受付を済ませてくれたので、すぐ内科へ行きました。内科は、呼吸、血液、腎臓など専門ごとに診療室がたくさん並んでおり、その前にたくさんの患者が順番を待っています。乱暴ですが、患者の少ない診療室を選んで、診察を受けました。医者は年配の女医さんでした。症状はめまいと吐き気で、耳鳴りは無く、風邪の表情も無いので、頸椎か、糖尿を疑われました。医者の指示で、血液検査と首筋のレントゲンをとることになりました。一旦、診察室を出て、会計で、診察料と検査やレントゲンの費用を払ってから、検査室やレントゲン室へ向かいました。全部で350元程でした。検査の結果が出るまで、点滴室のベッドで2時間ほど点滴を受け、それから検査の結果を持って、再び診察室へ入りました。医者の見立ては「頸椎骨質増生」でした。長時間のデスクワークで、首の頸椎が悪くなり、それがめまいの原因とのことでした。肩こりや首筋の痛みは全くなかったので、なんとなく釈然としませんでしたが、漢方薬のめまい止めの処方箋をもらい、首筋を動かす運動を勧められて、診察は終わりました。最後にまた、会計に寄って、薬代の100元を支払い、薬をもらって病院を出ました。病院の中の移動や医師との会話の通訳など、すっかり学生達の世話になりました。 宿舎に戻ると、門の前で、2人の学生が私を待っていました。昨日から何も食べていない私のために、食事を作ってくれるとのことです。好意に甘えて、粥を作ってもらって、食べました。他にも学生達から見舞いに行きたいという電話をもらいましたが、少し休みたかったので、断りました。幸い、翌朝からはめまいも吐き気も無くなり、こわごわですが、普段の生活に戻りました。脊椎の悪化は、病気というより、加齢や習慣によるものでしょう。運動のために毎日たくさん歩いていたのですが、思わぬところに落とし穴がありました。軽い気持ちで、病院の紹介を頼んだのですが、少し大騒ぎになりました。改めて、大学や学生達の好意をありがたく感じました。 そんなわけで近況を書くのが遅れました。もう3月も半ばになり、有名な武漢大学の桜ももうすぐだということです。満開になったら、学生達と見に行こうと思っています。
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