南京で生活して3年目に入りました。現在、建国58周年の国慶節のただ中で、ちょうど日本のGW期間中のように都心から人が出払い、いつもより静かな日々を過ごしております。8月27日から新学年が始まり、ちょうど3分の1ほど終わったところになります。
夏休みを日本で過ごして久しぶりの南京でしたが、まず変わったところは、先学期より交通渋滞が激しくなりました。毎朝、都心にある虹橋キャンパスからスクールバスに乗って、授業を行う江浦キャンパスへ通いますが、今までは時々だった長江大橋での渋滞が今期からは毎日のように続きます。南京の車の台数が増えているのでしょう。そういえば、同僚のC先生は6月にホンダのビッツを買いましたし、ドイツ語の主任先生は8月にチェコのスコダの車を買ったそうです。南京の人々の間に着実にマイカー・ブームが広がっています。学生達も半分近くが学生時代に運転免許を取って、卒業していきます。この割合はこれからも増え続けるでしょう。渋滞の結果、残念なことにスクールバスの発車時間が早くなりました。1時限目の授業では7時に、2時限目の授業では9時と15分も早まりました。
今学期、我大学の日本語学科は待望の副教授の主任(学科長)を迎えました。今まで、若手の先生が主任待遇で学科を取引ってきましたが、学位授与やその他で不便があるようで、先学期の後半から、別の大学の副教授をスカウトして、来ていただくことになりました。これで、中国人の先生9名、日本人、私1名と総勢10名のスタッフになります。新任のW副教授は日本語の名門吉林大学の出身で、若手先生の授業を見学したりして、日本語学科のレベルアップに意欲的です。私も何となく気が引き締まります。
中国の大学教員は年々資格が厳しくなります。最近では、教員の採用は、大学院卒業以上、場合によっては博士が前提となります。そして、教員経験5年以上、学会誌や著名専門誌に2編以上の論文が掲載されると、副教授の有資格者となります。我大学でも、現在、2名の先生が南京大学の大学院へ通い、修士取得に励んでいます。今後は博士号がなければ、もう副教授や教授への昇進は困難でしょう。若手の先生達は、授業時間が多くて研究する時間が無い、また、特に日本語は論文発表の専門誌が少ないと嘆いています。そんな事情からか、有名国立大学の多い南京ですが、日本語関係では、教授は高齢の方も含めて4、5名しかいないようです。
さて、先日、行きつけのスーパーで、レジの女の子から、こちらの顔も見ないで釣銭を投げつけるように渡されたので、思わずムッとしました。「いらっしゃいませ」、あるいは、込んでいる時は「お待たせしました」といってくれる日本のレジがなつかしくなりました。まだまだ、南京のサービスは、こちらが首をかしげたり、ムカッとさせられることが時々あります。広い店内では、お客をそっちのけで、商品の整理をしたり、ものを運んだりする店員が当たり前です。レジが立て込んで、行列が出来ても、スーパーの管理者達は休止のレジを開けようともせずに見守っています。
スーパーの経営者はいかに大量の品を安く売るかを考えても、お客へのサービスは二の次なようです。売り子は売り子で、命じられた仕事をミス無くやることに精一杯で、お客にサービスする余裕はないようです。一般に中国の職掌ははっきりしており、個人の責任が明確です。そのため、ミスには厳しく、必ず、何らかの罰則が決められています。日本では、社員のミスは会社のミスとして、時には、会社の責任者が謝罪したりしますが、中国ではありえないでしょう。そのせいか、店員達はクレームに敏感で、お客からクレームされると、謝るより、まず、弁解や反論が先に立ちます。支払に100元札や50元札を出すと、しげしげと透かしたり、斜めに見たり、熱心にチェックします。きっと、偽札を受け取ればその店員の責任になるのでしょう。中卒や高卒で地方から出てきた女の子達が、時給100円、月給12,000円程度で生活するのにカツカツで働いて、勘定が合わなければ給料から天引きされるのではたまりません。いつ来るかわからないお客に愛想を振りまくより、自分の分担をいかにミスをしないで乗り切るか、それで頭がいっぱいなのでしょう。最近、南京では大型スーパーや便利店(コンビニ)が乱立ぎみです。そのうち、経営者達がサービスを競争の武器にと気が付いて、店員達の職掌に多少賃金をアップして「サービス」を追加すれば、日本以上に快適なショッピングができるようになるかもしれません。
追: 2年間、「近況」として、中国での生活を綴ってきましたが、四季の移ろいも二回りしたこともあり、もう少し中国の内側を見たくなりました。そのため、駄文のタイトルを「情況」としてみました。「情況」は中国語でチンクウアンといい、様子、事情、状態といった意味になります。
追追: 南京の新聞に、市政府の標準最低賃金のアップが発表されていました。この10月から一等地区では、時給7.2元、月給850元、二等地区では、時給5.9元、月給700元とおよそ13%以上のアップになります。裏返せば、今まではこれ以下の水準で、また、中小企業や地方都市では、これよりさらに安い給与で働いているのでしょう。
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