南京近況その4 (2005年12月、2006年1月)


 あけましておめでとうございます。南京では大晦日から小雨がぐずついて、新年は時折ぽつぽつといった天気になりました。12月の初旬頃寒波が来て、真冬に入ったらどうなるのかと心配しましたが、どうも逆にその冷気が日本へ流れ、それ以来こちらはあまり冷え込みません。それでも北京やハルピンなど東北の人に言わせると、上海や南京などの江南の冬は寒いといいます。それは、零下も二桁になる北京や東北では地域暖房がいきとどいて、家の中はポカポカと暖かいようです。それに対して、江南では暖房は個人任せで、冷暖房兼用の空調機か、電気ヒーターが精々なようです。学生の寮や教室も当然ながら暖房施設はありません。教師も学生もダウンジャケットにくるまって授業をしています。一般の人々も、アパートやマンションを見ると空調機のファンが付いている所は多いのですが、電気代が高いせいか、あまり使わないそうです。こちらの人々の防寒対策は主に厚着となります。シャツやセーターを何枚も重ね着していて、昨年、年配の方とテニスをした時も、温まってくると一枚一枚脱ぎ始めるのですが、その枚数の多さには驚かされました。

 南京に限らず、中国の新年は静かです。通常、会社や学校は1日が休みですが、今年は、1日が日曜のため、2日も休みで、会社によっては3日も休みのところも多いようです。しかし、中国の正月は旧暦ですので、(今年は129日から始まりますが、)新年の1日は通常の休日と変わりません。最近、中国でも若い人達の間ではクリスマスが盛んで、祝日ではありませんが、イブの夜にはレストランが満員になります。南京でも総統府の近くに、1912スクエアーというしゃれたレストランが集まった一角があり、先日のイブには、ワインやビールを一杯飲むにも1時間以上待たされたと聞きました。そんなクリスマスと旧正月の春節に挟まれた新年は、疲れをいやすためか、体力を蓄えるためか、あまり出歩かずに静かに過ごすようです。学生達も、4日から最後の授業と期末試験が続くため、寮の中で勉強しています。こちらも31日は宿舎で採点をしたり、テレビを見ておりました。深夜零時になると近くから打ち上げ花火の音が聞こえ、続いて爆竹が鳴り始めましたが、長くは続かず、5分か10分するともう止んでしまいました。小雨まじりの陽気でしたので、他に物音も聞こえず、静かな年明けとなりました。

外国人教師は、期末試験期間ではなく、最後の授業で期末試験を実施してよいという慣例があるため、私も昨年の内に期末試験を済ませました。そのため、年末は最後の授業、試験の実施、さらに宴会とあわただしく過ごしました。南京は省都のせいか、外国人のためのパーティーがよくあります。12月の22日には、南京工業大学の外国語学院の主催で、外国人教師達への慰労会がありました。年配のアメリカ人の先生方が飲まないため、私だけ調子に乗って、学院のスタッフ達と白酒で乾杯を繰り返し、少し飲みすぎました。翌23日には、江蘇省の教育局の外国人オフィスが南京の外国人教師を招待して、ホテルでクリスマス・パーティーが行われました。英語の教師が多いため、過半数が英米人教師、次が、各大学の外国人オフィスの職員、それから日本人教師達といった案配です。24日のクリスマス・イブには、私の上に住むアメリカ人夫婦のホーム・パーティーに呼ばれました。スナックをつまんで一頻り話すと、後はキーボードの伴奏でクリスマス・ソングや賛美歌を歌って、聖書の一説を朗読するといったクリスマスの原点のようなパーティーでした。

ところで、先週の金曜日の午後に、今学期の授業の打ち上げを兼ねて、日本語科全体で寸劇大会を催しました。大学の教室を借りて、簡単な飾りつけをして、お菓子や飲み物を持ち込んで、教室の前方を舞台に設えと、学生達が手際よくセッティングをしてくれました。先生方が審査員で、私が審査委員長を仰せつかりました。エントリーは5組でしたが、学生達のオリジナルな寸劇は1組で、他は全部日本のアニメやテレビドラマの一こまでした。「千と千尋」、「ごくせん」、「トトロ」、「花より団子」といった具合です。説明なしでいきなりこれらの一こまが演じられますので、審査委員長としてはたいへんでした。しかし、観客の学生達は演技が始まるとすぐ反応しますので、ほとんど全員がこれらのキャラクターや内容を熟知しているのでしょう。授業ではあまりうまく話せない学生も、結構長い台詞を懸命にしゃべります。普段化粧をしない女子学生も厚めに化粧をして、科を作ったりと熱演でした。なかなかやるなという感じで、少々学生達を見直しました。最後に、主演女優賞、男優賞、コスチューム賞、演出賞などを表彰して、大喝采のうちに幕となりました。  

さて、年明けの南京を見てみようと、1日に中国人の日本語の先生と夫子廟を歩きました。夫子廟は孔子を祭った所で、南京市街の南にあります。廟を中心に、たくさんの商店が軒を連ね、秦淮河を挟んで老舗のレストランが続きます。ちょうど南京の浅草といった趣です。夫子廟に入ってみると、春節の飾り付けの最中で、なんだか新年の初詣とは程遠い雰囲気でした。小雨まじりの陽気のせいか、思ったより人通りも少なく、通常の休日とあまり変わりませんでした。こちらも近くの小吃のレストランで餃子や肉まんで昼飯を済ませて、そうそうに切り上げました。戻る途中、新街口や湖南路の映画館でどこかで見た顔が大きく載った看板が目に付きます。後で調べてみると、高倉健主演の中国映画が封切られていることが分かりました。「千里走単騎」という題名で、中国では有名な張芸謀監督の作品だそうです。それにしても南京の街角の所々で高倉健の顔を見るとは思いませんでした。

昨日で、ようやく採点が終わり、大学へ成績と答案用紙を提出してきました。早々とですが、明日から南京を離れます。学期の終わりに日本へ戻る時、毎回中国のあちこちを眺めて帰ります。今回は華僑で有名な福建省の福州、アモイに行ってみます。福州は台湾のすぐそばですから、とても暖かいようです。日本は今記録的な寒さで、大雪が降ってたいへんなようですが、皆様もお身体をお気をつけください。