南京近況その11 (2006年11月)


 南京も冬に入りました。街路樹のプラタナスの大きな葉がはらはらと舗道に落ちてきます。今年の秋は好天続きで、暖かな日が多かったのですが、11月の半ば過ぎから雨が降り始め、2週間近く冷たい雨が続きました。今週の始めに雨も止んで、日が当たるようになりましたが、まわりはすっかり冬の気配に変わりました。

 11月の第2週に3名のIBM先輩達がわざわざたずねてくれました。5日の行程ですが、上海からの行き来を入れると、観光には3日となります。定番ですが、中山陵、明孝陵、南京博物院、総統府などを案内しました。また、玄武湖や新街口へ行く際には、公共バスや地下鉄に乗ってもらいました。食事は、私が行きつけない高級レストランは敬遠して、庶民レストランで楽しみました。おもしろかったのは、南京でよく食べられている臭豆腐を注文しましたが、匂いのせいで不評でした。ちょうど中国の人が納豆を食べられないのと同じかもしれません。ハイライトは、3日目にスクールバスで一緒に大学へ出かけ、1時限目の3年生の日本概況の授業で、特別講演をしていただきました。流石に皆さん慣れたもので、ろくに打合せもしていませんでしたが、豊富な経験をいかした様々な話題で、すっかり学生達を掴んでおりました。昼は、教員食堂で学生達とランチ・パーティーで盛り上がりました。先輩方には多くの中国の若者と接していただき、楽しんでいただけたと思いますが、学生達にとっても、日頃あまり日本人と接する機会が無い中、3名の方との講演や交流を通して貴重な体験であったと思います。

 ところで、学生と言えば、中国では今が就職シーズンです。11月の始めに、南京の五台山総合体育館で江蘇省内の集団企業説明会が有ったのを皮切りに、各企業が大学で個別に就職説明会を行ったりしています。学生達もインターネットで意中の企業を探しては、履歴書などを送っています。そのため4年生のクラスでは授業も休みがちで、本来なら卒論のテーマも絞込みが終わり、執筆を始める時期でしょうが、まだまだ落ち着かないようです。こちらの企業は面接などで採用を決めると、ためらわずに学生達に自分のところでのアルバイトを勧めます。学生達も必須の授業を除いては、週のほとんどをアルバイトですごす者も少なくありません。日本のように3月に卒業して、4月の入社式まで最後の学生生活を謳歌するといった悠長な感じは無く、6月に卒業して、寮を出ると、もう就職先で働き始めるのが普通です。学生達にしてみれば、アルバイトで収入が入るのと、その企業が気に食わなければ、まだまだ他の企業を探すチャンスがあるので、良しとしているのでしょう。

 話は変わりますが、同じ11月に3年生の作文の授業で、「日中友好」、「私と日本語」をテーマに作文書かせてみました。このテーマは、時々日中友好協会等で懸賞作文を募集するので、その練習も兼ねてやらせてみました。学生達の作文を添削するうち、案の定と言うか、こちらも考えさせられることが多々ありました。多くの学生が小さい頃は日本が嫌いだったと書いてきます。テレビの戦争映画や学校の歴史の授業で日本の侵略を見聞きするにつけ、日本とは恐ろしい国で、嫌いになるようです。それが、小学校では、「ドラエモン」、古くは「一休話」、中学、高校では「スラムダンク」、「xx闘士」、「ドラゴンボール」、「犬夜叉」等を見るうちに、日本へのイメージが揺らいできます。これらのアニメをきっかけに、さらに日本の音楽やテレビドラマ、映画へと興味が広がり、やがて、日本は素敵で、一度行ってみたいとの思いも育つようです。さすがに日本語科の学生達は日本への警戒は大分薄らいでくるようですが、一般の学生には相反する思いが同居しているのではないでしょうか。作文の中で何人かの学生達は、他の学部の学生から、「なぜ日本語を専攻するのか。しかも南京で。」と問い詰められた経験を書いていました。私自身はまだ、日本人教師としてキャンパスを歩いていて、この手の質問を受けた経験はありませんが、相変わらず放送される戦争映画を見るとやはり心配になります。反面、上にあげた日本アニメが日本人の目から見て全部が全部感心する作品とは言えませんが、それでもこうした作品が中国、韓国を始め、東南アジア、世界へ広がっているのを見ると、改めてその影響力に感心いたします。

 以前の近況で、南京日本商工クラブに加入していることを書きましたが、毎週そのテニスの同好会で汗を流しています。南京の繁華街新街口の側に、五台山体育センターがあり、その中に、開閉式の屋根を持つりっぱなテニス・コートがあります。1時間60元とこちらにすれば割高ですが、全天候型のため重宝しています。先週、その同好会と南京市政府のテニス愛好者との間で、親善試合を行いました。場所は、昨年完成した南京市のオリンピック・センターの室内テニス・コートです。同好会のメンバーは南京駐在の企業の方を中心とした中高年者が多いので、対戦する前にはもし南京市のメンバーが現役の若手プレーヤーだったらどうしようなどと心配をしましたが、幸い、同じような年代と力量の方々で、試合を楽しむことができました。先方も、日本人の南京ライフが楽しいものであることをアピールし、日系企業誘致に役立てようと、進んで参加してくれました。公式審判のもとでダブルス12試合を行い、結果は僅差で中国側の勝利に終わりました。中国の人のテニスは、フォームはさほどきれいではありませんが、ラケットを思い切って振り抜くため、時々厳しい球が返って来て対応に慌てます。何でも同じでしょうが、他流試合をするととても緊張感があっていいものです。試合の最後はにぎやかな昼食会で終わりました。この模様は、市政府のHPJETROHPへ掲載されるようです。

 今、中国ではイメージアップのためか、テニスとゴルフに力をいれているような気がします。全国チャンネルのCCTVには、ゴルフ・テニスの専用チャンネルがありました。そこではほとんど連日、タイガー・ウッズのプレーが放送されています。テニスも、先日上海でマスターズの大会が行われ、世界のトップ10プレーヤーがほとんど全員集まりました。南京でもゴルフ場が4つあります。料金は日本並みで、まだ、プレーヤーは日本人、韓国人、台湾人が中心ですが、いずれ現地のプレーヤーが増えるでしょう。テニスは、五台山やオリンピック・センターのようにりっぱなコートがあり、テニス・スクールも行われています。前回のオリンピックでは、テニスの女子ダブルスで中国が金メダルをとりましたが、やがて、ゴルフやテニスの世界大会に中国人プレーヤーが多数出て来ることになるでしょう。

 いよいよ12月に入りました。例によって、期末試験の準備や授業の締めくくりであわただしくなりそうです。気温も大分低くなりました。昨日辺りから空調の暖房を入れっぱなしにして震えています。寒さの折、風邪などひかぬようお気をつけください。

追: 私事ですが、1210日に次女が結婚いたします。結婚式に出るため、一時日本へ戻ります。短期のため、皆様とお目にかかる時間はありませんが、ご容赦ください。