秋寒(あきさむ) 8月30日に蘭州へ戻りました。9月1日から中国で12年目、蘭州で5年目の新年度が始まりました。久しぶりの楡中ですが、例年より寒く感じました。当初は残暑の厳しい日本から来たので、涼しくて快適でした。しかし、天候が崩れて雨になると肌寒く、半袖を着たのはせいぜい始めの1週間ほどで、それ以降は長袖、今ではその上にトレーナーを着て、夜になるとジャケットをはおっています。今年の秋は雨や曇りが多く、めったに月や星が見えません。 春に咲き誇った花々も秋には小さな花壇にコスモスや菊などがわずかに咲いている程度です。それでも楡中の農村を歩くと、草むらには薄紫の小さな野菊があちこちに咲いています。畑では9月の中頃に、キャベツや白菜、ブロッコリーの収穫が終わり、背丈の伸びたトウモロコシが収穫を待っています。果樹園ではリンゴが赤く実っていますが、まだ、梨はあまり目立ちません。そういえば、キャンパスでは紅葉が始まりました。あまり赤い紅葉は見られませんが、楓やポプラなどの木々の葉が黄色く染まり始めました。 新入生と軍事訓練 9月1日から新学年が始まり、さっそく授業が始まりましたが、新入生は別メニューになります。9月2日と3日が新入生の登録日で、蘭州から次々とバスで新入生とその父兄たちが運ばれて来ます。最近では自家用車で来る新入生も多く、サッカー場や図書館前の広場の臨時駐車場が車でいっぱいになりました。新入生はほぼ全員が父親や両親に伴われて来ます。蘭州市の学生はほんのわずかで、他はほとんど他の省から来る学生ですので、親からすれば大学や子供の生活する場所を見ておきたいのでしょう。中には、一家で蘭州観光をしてから登録に来る学生もいるようです。バスから降りた新入生達は学部別に設けられた申込所で手続きを済ませ、割り振られた寮へ向かいます。キャンパスのあちこちに生活用品を扱う出店がたくさんあり、布団やマット、洗面道具など好きなものを買ってもらい、おまけに、大きな荷物を親に持たせて、寮へ向かう学生も少なくありません。 受け付けは2日間で終わり、今年は4600名の新入生が入学して来ました。そして、4日からさっそく軍事訓練が始まりました。現在の中国では徴兵制がない代わりに、中学、高校、大学とそれぞれ入学時に訓練が義務付けられています。中でも大学の訓練が一番本格的で、厳しいようです。訓練は19日までおよそ半月行われます。朝6時20分に起床ラッパが鳴り、30分に集合、軽くランニングをしてから、朝食をとり、8時から訓練が始まります。訓練は夕食後も9時過ぎまで続き、10時半に消灯ラッパが鳴なって、一日が終わります。蘭州大学では訓練の指導を国防生が担当しています。国防生とは、軍隊に採用されて大学で学んでいる学生達で、学費免除で、数百元の給与ももらえるようです。彼等は専用の寮に200〜300名ほど住んでいて、専攻毎にそれぞれの学部で学んでいます。 大学によって訓練の内容が異なるようですが、蘭州大学ではひたすら隊列を組んで、行進を繰り返しています。この時期、数十名のグループに分かれ、掛け声をかけて行進する新入生達がキャンパスのいたるところで見られます。例年、9月の上旬は残暑が厳しく、炎天下に行進をするのは相当にきついようですが、今年は涼しく、雨も多かったので、彼等には幸いだったことでしょう。それでもグループの周りには必ず落伍した学生が2,3人座っています。受験で体力が落ちた学生達には相当つらい訓練のようですが、終わってみるとそれなりの達成感が得られるようです。因みに、学生達がこの訓練をどう思っているのか、2年生、3年生に聞いてみました。まず訓練の感想では、苦しかった、苦しかったが良かったがほとんどでした。訓練をまたやりたいか聞くと、これもほぼ全員がもう2度とやりたくないと答えます。訓練の意義では、健康に良いや大学生としての自覚が得られるが多数で、愛国心の高揚は若干名でした。最後に、軍人についてどう思うかと聞くと、かっこいい、憧れるが多数だったのは、日本と比べて少し意外でした。 列車の切符購入 10月1日から中国は国慶節です。2日間の振替日はありますが、7日間の連休となります。今回は、個人のチベット旅行が解禁になったと聞きましたので、思い切ってチベットへ行ってみることにしました。解禁といっても、他の地域と同じように全て自由というわけにはいかず、チベットの旅行社に依頼して、旅行許可書の申請が必要です。また、旅行中はその旅行社のガイドを帯同させなければなりません。チベットは青蔵鉄道が有名ですから、高原列車で行こうと思います。そのため列車の切符の手配もしなければなりません。こうした手続きの全てを蘭州の旅行社の友人にお願いしてやってもらいました。本当に助かりました。その中で、切符の購入の手続きがおもしろかったので、少し書いてみたいと思います。 2012年から、中国の列車の切符の購入は全て「実名制」になりました。駅で切符を買う際、身分証明書やパスポートなどを見せなければなりません。購入した切符の表面にはちゃんとパスポート番号や氏名が印字されています。まるで航空券の購入のようですが、旅客の安全と不正購入の防止(ダフ屋等)のためだそうです。最も、列車に乗車する際には、切符を見せるだけでよく、パスポートとの照合は行われません。(場合によって求められるのでしょうか?)実名制の導入と共に、インターネットや電話で切符を買うことができるようになりました。これにより、2、3週間前から切符の購入ができるようになりました。電話の場合は、予約センターへ電話をかけて希望の列車の予約番号をもらいます。そして、24時間以内に最寄りの駅へ行って、料金を支払い、切符を入手します。インターネットの場合は、まず最寄りの駅で利用者の登録が必要です。後は自由にインターネットを使って希望の列車を予約し、料金を支払います。そうすると予約番号がもらえますので、これで乗車前までいつでも切符の入手が可能です。今回は、蘭州駅ではなく、キャンパスのある夏官営鎮駅へでかけ、まずインターネット登録を行いました。田舎の駅でしたので、駅員が外国人のパスポートの見方が分からず、旅行社の友人に電話で指示をしてもらって、ようやく登録ができました。インターネットによる予約手続きはその友人に代行してもらいました。うまく希望の列車の切符が取れたので、先日予約番号を持って、また夏官営鎮駅へでかけ、切符を発券してもらいました。その際、発券手数料として1枚につき5元とられました。インターネットの手続きはパソコンやスマホで可能です。これまで休暇の前に駅の切符売り場では長い行列ができていましたが、便利になったものです。
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