蘭州近況その29 (2014年3月)


学生たちの今学期への抱負

 今期は31日に楡中へ赴任しました。思ったより暖かくホッとしましたが、それでも夜は冷え込みます。蘭州や楡中では寒暖の差が激しく、平均で15℃、ひどい時には20℃以上の差があります。しだいに暖かくなるにつれ、困ったことに暖房が止まり、昼は暖かくても、夜は寒くて震えています。ただ幸い空気は良好で、黄砂もあまりありません。

 さて、新学期にはりきって授業に臨むと、学生がほとんどおりません。日中友好協会主催の西北地区学生交流会が行われ、陝西、甘粛、四川の3省の学生90名ほどが日本へ招待されました。蘭州大学からも2年生から4年生まで30名ほどが参加し、2週間ほど授業を欠席しました。残った学生と授業を始めましたが、閑散として、あまり新学期という気分にはなれませんでした。学生に聞くと交流会への参加費用は無料とのことでした。いったいどこから予算がおりたのでしょう。おそらく日本側からの援助でしょうが、この時期によく実現できたと感心しています。

 そんなわけで、新学期早々の2年生の作文の授業では出席者が数名でした。初回ですので「今学期の抱負」をテーマに作文を書かせました。その代表作を紹介します。

 

「今学期の目標」

 大学に入ってから、もう1年半になりました。光陰矢の如しです。
 私たち2年生にとって、今学期日本語4級試験に合格することがたぶん一番大切な目標です。その試験に合格できなければ、大学を卒業できません。しかし、今私の成績からみれば、合格するのはちょっと難しいです。ですから、今から、もっと頑張りたいと思います。なるべくドラマなどを見ません。授業の時間を除いて、できるだけ自習に行きます。日本語4級試験に合格するように、単語や文法を暗唱したり、聴解を練習したり、以前の試験問題を練習したりするつもりです。
 この目標の他に、私は小さな目標が一つあります。冬休みの間、病気だったので、本当に辛かったです。体がよくなければ、何もできないことが分かりました。ですから、今学期私は体を鍛える計画を立てました。夕方それとも明け方にジョギングに行くつもりです。毎日ジョギングをすれば、体がよくなると思います。
 この二つの目標を達成するために、一生懸命頑張ろうと思います。

 

 いかがでしょうか。現在の中国の大学生は「90后」世代の一人っ子で、比較的豊かな環境で大事に育てられてきました。重点大学の学生ですので、真面目によく勉強しますが、ハングリーな貪欲さはありません。言われたことをコツコツやるタイプが多いようです。彼らと話すと、足りないものは自立心と自分で考える力だと言います。中国の学生は親とのコミュニケーションは親密ですが、なかなか親離れができません。就職から結婚まで親の意見に左右されます。彼らは日本の学生がよくアルバイトをするといって感心しています。彼らにとってアルバイトは自立への足がかりのようです。ただ、楡中の農村に居るため、あまりよいアルバイトはありません。

 蘭州大学日本語科の学生にとっては、2年生の後期に行われる大学共通の日本語専業4級試験に合格することが卒業の前提となります。その他、3年生の前期に日本の国際交流基金が実施する日本語能力試験1級に合格することが大きな目標となります。1級の資格が無いと日系企業への就職ができません。そのため授業が終わると、図書館や空いた教室でよく自習をしています。図書館は学生の人数の割には狭いようで、開館前からたくさんの学生が並んでいます。寮の部屋にも机はありますが、4人部屋で狭いせいか、寮ではパソコンで遊んだり、友だちとだべったりする方が多いようです。

 学生の作文を読んで感じられるかもしれませんが、中国の学生は随分まじめだと思います。単に抱負を書きなさいと言っただけですが、勉学の目標をまずあげます。欧米の学生ならば、ボーイフレンドを見つけるとか、敦煌へ旅行する、あるいは、日ごろ憧れている村上春樹の小説を読破するなど、自分の一番興味があることを書くのではないでしょうか。それに中国の学生は「一生懸命頑張ります」とか、「努力します」と抱負に書くのが好きなようです。こんな決意を書くのは中国と日本の学生だけではないでしょうか。

 

日本での友好交流顛末

 3月の中頃、日本へ出かけていた学生たちが帰ってきて、ようやく新学期らしくなりました。交流に出かけた学生たちにレポートを書くよう宿題をだしました。以下は学生たちがどのように日本を感じたのかつづってみます。

 学生たちは西安から東京へ飛び、まず皇居やお台場など観光をして、新幹線で京都へ向かいました。京都では清水寺や嵐山を見学し、同志社大学で講演を聞き、それから奈良へ向かいました。奈良では東大寺、薬師寺、唐招提寺などを観光した後、明日香村で3人ずつに分かれてホームステイをしたそうです。翌日、琵琶湖の雄琴温泉で1泊し、再び東京へ戻りました。そして、早稲田大学で講演を聞いて、大井町でみやげ物を買ってから、中国へもどったようです。全部で8日間の行程でした。

 どの学生もまず日本の清潔さ、サービスのよさに感心したようです。何日歩いても靴が汚れないと感激していました。意外だったのは、高層ビルの都市景観よりは、皇居の緑、奈良の古寺の古さや静けさなどに強い印象を受けたようです。中国の観光地では遺跡を新しく建て替えてしまう傾向があり、古い遺跡をそのまま保存している日本の観光地に感心するのでしょう。

 明日香村でのホームステイは何よりも楽しかったようで、日本の人たちとの触れ合いや家庭料理を堪能したようです。時節柄、まだ雛人形が飾られており、8段飾りの豪華さに感動したようです。ホームステイ先はきれいで大きな家が多かったようで、帰って来た学生達から明日香村は金持ち村なのかとよく聞かれました。

 雄琴温泉では和風旅館に泊まりましたが、生憎天気が悪く雪が降ったようです。そこで温泉を初めて体験し、露天風呂からの雪景色が最高とのことでした。

 食べ物については、純粋な和食にはなかなか慣れなかったようです。すき焼き、天ぷら、湯豆腐までは問題がないようですが、干物や刺身になるとどうも手が進まなかったようです。ただ、スイーツについては絶賛していました。

 ところで、今回の旅行で学生たちはたくさんの小遣いを持っていったようです。みやげを買うために皆だいたい数千元、中には2,3万元を使った学生もいたのには驚かされました。きっと親戚からもたくさん餞別をもらい、そのお返しに苦労したことでしょう。ただ、最近の日本では中国のキャッシュ・カードが使えるので、便利だったようです。高額のみやげ物で一番多かったのが、化粧品でした。女子学生が多かったのでなおさらなのでしょう。もちろん中国のデパートでも日本の化粧品は売られていますが、中国で買うより安いそうです。

 今回参加した学生は全員日本へ行くのは初めてでした。皆それぞれに日本の良さを感じて、楽しんで帰って来ました。主催者の意図した日中友好への効果も大きかったことでしょう。

 

春めくキャンパス 

 この近況を書いている間にも、キャンパスはどんどん春めいてきました。15日を過ぎてから、迎春花、日本の黄梅が咲き始めました。このキャンパスでいつも最初に咲きます。ただ、昨年と比べると一週間ほど開花が遅れています。今年は中国でも冷え込んだのでしょうか。いつも早く咲く石炭置場の前の杏もつぼみが膨らんでいきました。きっとこの2,3日にはあざやかに咲きだすことと思います。そういえば、寮の側にある小ぶりの桃もいつのまにか咲き始めていました。薄いピンクの花ですが、はたして梅なのか、桃、あるいは杏系なのか迷います。花びらがややとんがっているので桃にしておきます。

楡中の農村を歩くと、田圃の種まきが始まっていました。牛や馬を使って畑を耕し、種をまいて、その上からビニールシートをかぶせていきます。きっと夜間の寒さや地中の水分が乾燥するのを防いだりするのでしょう。また、どこからわいてきたのか農道では蛙がのそのそ歩き始めています。

もうすぐ宿舎の前では、連翹や楡葉梅(オヒョウモモ)、ライラックなどが黄色、ピンク、紫の花を咲かせることでしょう。これから花の写真を撮りまわるのに忙しくなりそうです。