蘭州近況その20 (2012年12月〜2013年1月)


ミラリバ仏閣(米拉日巴)、ラブラン寺(拉卜楞寺)を巡る


 2013年は静かに明けました。大晦日まで授業や期末試験があり、あまり新年の気分が出てきません。また、この冬は例年より寒く、学生たちは寮や図書館などに閉じこもり、あまり出歩かないからかもしれません。試験日の間が空いたので、冬の甘南高原を見てみようと思いました。始めは夏河県のラブラン寺へ行こうと思いましたが、外国人の宿泊が規制されているようで、合作市のミラリバ仏閣を見にいくことにしました。

 合作市は甘粛省の甘南チベット族自治州の州政府があるところで、夏河県もおなじ自治州にありますが、州都ですから外国人の観光も問題がないと思いました。現に、昨年九寨溝へ行った折に、昼食をとった所でなじみがあります。朝、楡中を出て、蘭州南のバスターミナルを午後1時に出発し、合作まで270km5時頃着きました。さっそくネットで予約したホテルへ行くと外国人は泊められないとあっさり断られました。外国人の泊まれるホテルを紹介してもらい、そちらへ向かいました。ホテルは桃源大酒店という三つ星ホテルで、宿泊は大丈夫でしたが、部屋が443元の特別室しか無いと言われました。仕方がないので1泊だけ泊まることにしました。ホテルのフロントでは警察へ電話をかけ、許可を取っていました。警察からはいつどこから来て、どこへ行くのかと執拗に聞かれました。合作市は人口8万程度で、数キロのメインストリートが1本あるだけの小さな町でした。

 翌朝、市の北端にあるミラリバ仏閣へ観光に出かけました。小高い丘に沿って、仏閣や寺院、白塔などが建っています。入口のすぐ正面にチベット寺院独特の赤い壁と黄金色の瓦で葺いた屋根を載せた仏閣が建っていました。寺院というより、高さ40m9層の四角いビルといった感じです。1777年建立だそうで、中には、チベット仏教の聖者ミラリバやチベット仏教各派の祖師の像が祭られているそうですが、信徒以外は入れませんでした。ちょうどチベット仏教では1月に大法会があるそうで、建物の周りをたくさんの民族服を着たチベットの人達がお経を唱えながら、あるいは、無言で何回も回っていました。寺院と寺院の間には白い壁に覆われた僧坊がいくつもありました。信徒たちは寺院から寺院をぐるぐる回り、各寺院の外壁や内側にいくつも並ぶ摩尼車を回しながら祈って行きます。中には、寺院の周りを五体投地をしながら回る信徒もいました。3000mの真冬の高地ですから、さすがに観光客は私一人で、熱心な信徒に囲まれ、あちこちカメラを向けるのもはばかられました。

 参観を終えて、一端ホテルへ戻り、チェックアウトの準備をしていると、警察から電話がかかってきました。チェックアウトをしてどこへ行くのかと聞かれたので、部屋代が高いので別のホテルへ移るというと、それなら、外国人の泊まれるホテルはあまり無いので探してやると言われました。しばらくして、また電話があり、甘南飯店なら安いからそこに泊まれと言われました。狭い町なので、甘南飯店がどこにあるかなんとなく分かりました。中国のホテルのチェックアウトは12時までですので、桃源大酒店をチェックアウトしてから、付近で昼食をとり、その後に甘南飯店へ向かいました。甘南飯店はやはり三ツ星ホテルでしたが、少し古く、料金は1260元でした。フロントでチェックインの手続きをしていると、警察から確認の電話があり、また、今日はどこへ行くと聞かれました。これから市内観光をすると答えました。こちらの携帯番号を教えると、安心したのか、それで何事も無く終わりました。午後は市内を散策してみました。小さな町ですが、1から3番までの市内バスが走っていました。試しに1番のバスに乗り終点まで行ってみました。特に何も無い田舎の町ですが、ただ、チベット族の人々が多いのが他と違います。民族服を着た老人や若者がたくさん歩いており、物珍しさを感じます。

 翌日は予定を変更して、早く出発し、夏河を観光して蘭州へ戻ることにしました。夏河県拉卜楞(ラブラン)?まで70km、バスで1時間20分ほどかかります。8時のバスに乗りました。バスは空いていたので、前の席に座って景色を見ていると、国道沿いに五体投地をしている巡礼者が頻繁に見えてきました。日の出が7時半過ぎですので、まだ冷気が漂う早朝です。寒さの中を、2,3人ずつグループになって、道路に身を投げ出して進みます。中年の女性が多いようでしたが、壮年の男性や若い人もよく見かけました。舗装されているとはいえ、片側1車線の国道です。バスや大型トラックがひっきりなしに通るので、事故が起こらないのか心配になりました。甘南は名高いチベット寺院の多いところです。全行程を五体投地で進むのかどうかは定かではありませんが、各寺院を巡礼して回るのでしょう。五体投地の巡礼は過去の話しかと思っていましたが、現実に巡礼者の姿を目にして驚きました。

 ラブラン寺はチベット仏教ゲルク派の六大寺院の一つで、1710年、嘉木様活仏(ジャムヤン・ツェパ一世)によって創建されました。現在では、世界最大のチベット仏教の学府で、僧房は一万を超えると言われます。ミラリバでも見られた白壁の僧坊がここでは延々と続き、迷路のようです。小学生か中学生の子供の僧侶もよく見かけましたので、学校の施設もあるのでしょう。ここでも大法会のためか、たくさんの信徒たちが寺院の周りを回っていました。大きなチベット寺院といえば、西寧にある同じゲルク派の塔尓寺へ行きましたが、ラブラン寺はそれよりはるかに大きな規模でした。ラブラン鎮は寺院を中心とした門前町でした。寺院の前にはたくさんのホテルと土産物屋が続いています。しかし、この時期のためか、観光客はほとんど見られませんでした。寺院で写真を撮っていると、なんとなく肩身が狭い思いでした。蘭州へ帰るため、あまり時間の余裕がなく、広大な境内を駆け足で回りました。観光シーズンではチケットを買うと、ガイドが引率して、寺院の内部も見せてくれるようですが、今回は法会のため、信徒がひっきりなしにお参りをしていて、それどころではないようでした。

 帰りは、蘭州までの直行便が無いので、回族自治州の臨夏まで出て、そこで乗り換えて戻りました。幸い、乗り継ぎも順調で3時半には蘭州へ着きました。合作、夏河はともに3000mの高地です。出かける前には寒さを心配しましたが、普段生活している楡中より少し寒い程度で、寒さにめげず歩きまわることができました。また、周りはなだらかな山稜が続き、乾燥地帯のせいかあまり雪も無く、観光に差し支えることはありませんでした。

 ホテルでは警察などの警戒が厳しいと思いましたが、実は、昨年、合作、夏河で数人の焼身自殺者が出ています。外国人の個人旅行は禁止されるのではないかと心配していましたが、監視される程度で済みました。今回、チベット族の人々の信仰の強さが深く印象に残りました。彼らは何を思って祈るのでしょう。機会があれば探ってみたいと思います。

 

インターネット通販を試す

 最近、日本と同じようにこちらでもインターネット通販が盛んです。大学の裏にある学生相手の商店街に何件か通販の受け渡し所ができました。武漢でもインターネット通販が盛んでした。ただ、宅配は学生寮の中までは届けられないようです。それで、大学の門前まで配達業者が届け、携帯電話で学生を呼び出しては渡していたようです。通販の注文が増えるにつれて、これでは対応ができなくなったのでしょう。スポンサーは誰か分かりませんが、学生に物品を渡すために宅配業者の店舗が増え始めました。

通販を利用しようとしたきっかけは、電気掃除機を買おうと思ったためでした。部屋の中にすぐこまかいホコリがたまり、箒で掃いてもキリが無いので、掃除機を買うことにしました。蘭州の電気街へ行ってもよいのですが、店を回って手頃な物を探すのが面倒なので、インターネットで買うことにしました。通販サイトを見ると様々な商品がありました。壊れてもよいからできるだけ安ものを買いたかったので、メーカー品の一番安いものを選びました。カード決済など若干不安がありましたので、よく通販を利用する学生を呼び出し、買ってもらいました。得尓瑪(ドアルマ)というメーカーの小型掃除機で138元でした。蘭州は中国でも遠隔地なので、送料をとる業者が多いのですが、この掃除機は無料でした。ただ、発注してから商品が届くまで34週間かかりました。

これに味を占めたわけではありませんが、次に中国アマゾンで本を購入しました。さらに、いつも愛飲しているネスカフェ・ゴールドブレンド100gが蘭州のスーパーで92元に値上げされたので、これも通販で見ると同じものが55元、送料10元とありました。さっそく学生に注文してもらいました。これまでのところ、おかしな商品が来ることもなく、店で買うより安く買えて満足しています。ただ、日本に比べると配送時間が長く、注文してから2週間以上かかるのが普通なようです。

中国でもインターネット通販の売り上げはどんどん増えているようです。日本でもまだ粗悪な業者によるトラブルが多く、中国でも事情は同じでしょうが、そうしたリスクを勘案しても、便利さや手軽さからか、通販が次第に定着しているようです。市街から遠いというキャンパス事情もありますが、学生の中にはけっこう通販愛用者が多く、ついついたくさん買ってしまう者もいるようです。通販サイトでは1111日とか、1212日など特別な日を選んで、サービス・デーとして特別割引を実施し、販売促進に余念が無いようです。学生も言っていましたが、高価な物を買わず、また、自分がよく知っているメーカーやブランドの商品を選んでいれば、あまり問題はないのではないでしょうか。

 

修理の話

 前回パソコンが故障し、近況の発送が遅れたと書きましたが、今回、修理について少し書いてみたいと思います。南京や武漢でも事情は同じでしたが、寮に住んでいると時々ものが壊れます。電気がつかなくなったり、洗面所で水漏れがしたり、いろいろトラブルが出てきます。その度に、管理人に連絡して、修理する人を呼んでもらいます。修理人がすぐ来るのは良いのですが、彼等はあまり原因を追及しようとはせず、使えるようになることを主眼に対応していきます。すぐ使えるのはありがたいのですが、原因を突き止めないので、じきに同じトラブルが繰り返されることがよくありました。彼らの作業をそばで見ていて、なぜ原因を探らないのだろうと歯がゆく思いました。ただ、何とか使えるようにしようという心掛けはりっぱで、手近なものを利用してすばやく応急手当てをしていきます。今回パソコンを修理に出してみて、改めて、修理について考えさせられました。

1128日の朝、パソコンの電源を入れてもディスプレイに何も映らなくなりました。どうもWindowsは正常に動いているようですが、ディスプレイが故障しているようです。学生を呼び出して、キャンパスのパソコンショップへ行って見てもらうと、たぶんディスプレイ・カードの故障だが、ここでは直せないので、蘭州へ行って修理してもらえとのことです。翌日さっそく学生と一緒に紹介してもらったパソコンの修理屋へ行きました。修理屋は蘭州大学本部キャンパスに隣接した蘭州大学電子城の中にありました。電子城は4階建の大きなビルで、中に、メーカーショップから、部品屋、修理屋などが何十件と入っていました。修理屋でパソコンを見せると、ディスプレイ・カードと冷却用ファンの故障で、部品を取り寄せて直すので3日かかると言われました。ディスクが壊れないかと心配でしたが、修理を依頼して帰りました。3日後に修理が終わったと連絡をもらったので、また、蘭州へパソコンを取りにでかけました。修理代はファンが140元、カードが120元で、半年の保証付きでした。私のパソコンはlenovoThinkPadで、純正部品が使われたかどうか分かりませんが、ちゃんと3日で直りました。幸い、ディスクにも異常がありませんでした。

実は、冷却用ファンは以前から調子が悪く、騙し騙し使っていました。日本でパソコンショップへ持っていくと、たかだかファンを取り換えるだけなのに、メーカーへ直送して直すので1週間以上かかると言われました。あまり修理時間が長いので、修理をあきらめて戻りました。最近の電気製品やパソコンは高度に電子化されて、日本では電気屋やパソコンショップでは修理をしなくなりました。何でもメーカーへ送って対応するようになりました。そのせいか、町の技術屋さんがめっきり減ったように思います。蘭州の電子城では小さな修理店がたくさんあり、だいたいどんなメーカーの製品でも対応するようです。このあたりは、何とか使えるようにという精神なのでしょうか。何だか、電気製品やパソコンが修理できない日本の技術、技術屋さんが心配になりました。