蘭州近況その1(2010年9月)


 
蘭州赴任顛末

 826日の木曜日に日本を経って、蘭州へ赴任しました。今回は上海経由で蘭州へ行くことにしました。成田から上海まで3時間弱、上海から蘭州まで同じく3時間、途中上海での蘭州便の出発が2時間遅れましたが、その日の20時半に無事蘭州中川空港へ着きました。空港には、日本語科主任のR先生が迎えてくれ、先生の車で蘭州市内へ向かいました。宿舎となる蘭州大学の楡中キャンパスへ向かうのかと思いましたが、市内の本部キャンパスの専家楼へ案内されました。大学の手続きが終わるまで、当分専家楼で待機して欲しいとのことでした。

翌日は3名の学生が迎えに来てくれて、市内見物に連れて行ってくれました。勝手が分からないので、見物から戻って、改めてR先生に詳細を伺うと、外事所では健康診断やVISA申請に伴う手続きが終わるまで本部キャンパスで待機して欲しいとのことでした。仕方がないので、土、日は一人で市内観光をして過ごし、月曜日に早々日本語科のL先生に検疫所へ案内してもらい、健康診断を受けました。その結果は3日後に出るそうですが、特別料金を払って、その日の夕方には診断結果を受け取り、外事所へ提出しました。運が悪いことに、持病で腎臓の近くに水嚢のようなものがいくつかあるのですが、それが超音波検査でひっかかり、多嚢肝と診断結果に書かれました。外事所ではそれを気にして、腎臓の詳細な検査をするように勧められました。再び、L先生にお願いし、近くの甘粛省人民病院へ行って診察を受けました。幸い、水嚢は良性で腎臓病とは関係がないとの診断で事なきを得ました。

既に月曜日から新学期が始まっています。外事所の準備は遅々として進まず、見通しがたたないので困りました。やることがないので、毎日市内を観光して過ごしていました。金曜日に外事所に顔を出すと、ようやく担当者が来週の火曜日には楡中へ案内すると言ってくれました。97日の火曜日に、武漢から蘭州へ送った段ボール箱7箱を大学の車に積み込み、市内から47km離れた楡中キャンパスへ赴任することができました。結局、木曜日から翌々週の火曜日まで2週間近く本部の専家楼で過ごしました。

 

蘭州の概要

 蘭州は北緯36度、東経103度に位置し、人口凡そ320万人、中国西北部の甘粛省の省都です。東京が北緯35度ですから、緯度で言えばわずかに北となります。北京から1100km以上西にあり、9月中旬の現在でも、日の出は6時半、日の入りは20時頃になります。蘭州のある甘粛省は東西に細長く、省都の蘭州は東側、有名な敦煌は西側にあり、その間は1000km近く離れています。省の北側が新彊、内蒙古、東が寧夏、陝西、南に四川、西は青海省となります。蘭州は古くからシルクロードの入口として栄え、古くは金城湯池の語源となった金城と呼ばれました。気候は温帯大陸性気候に属し、海抜1500600mの高地にあるため、夏でも30℃を超えず、冬は−1112℃、年間平均気温が11℃と言われます。地元の人に聞くと、良い季節は夏と秋で、冬や春は乾燥し、時々黄砂や煤煙に悩まされるようです。中国でも北方に入るせいか、宿舎や教室には必ずスチーム暖房の設備があります。年間を通じて降雨量は少なく、大学のキャンパスや市内の公園には所々に散水機が設置されており、時折、水がまかれているのをよく目にしました。

 

蘭州を観光する

 蘭州は黄河の都、あるいは、牛肉ラーメンの郷などと言われ、街の真ん中を西から東へ黄河が流れています。というより、黄河の流れる山間の平地に沿って蘭州の街が作られたようです。従って、市街は東西に細長く伸び、北と南は小高い山々が連なります。

 観光の初日は黄河に架橋された中山橋に行きました。黄河第一橋と言われる鉄橋で、その謂われは、どうも、黄河に架けられた最初の橋で、かつ、黄河の一番上流に架けられた橋ということにあるようです。橋を渡って、白塔寺へ登りました。チベット仏教の高僧を偲んで建てられたという白塔が小高い丘の上に立っており、そこから、市内を流れる黄河が一望できます。黄河はその源流を蘭州のすぐ西にある青海省に発しているため、この辺りではまだ川幅が狭く、せいぜい200mも無いように思いました。しかし、思ったより流れが早く、黄土色の河の水が勢いよく流れているのに驚きました。これまで長江の流域で過ごしてきたので、初めて見る黄河は印象的でした。

 次の日は、市街の南に壁のようにそびえる皋蘭山に登りました。漢の武将で、匈奴討伐で有名な霍去病ゆかりの五泉山公園を抜けてさらに上へ石段を登ると、山頂への車道へ出ました。そこに何台かの白タクがいたので、無理をせず、車で山頂へ向かいました。皋蘭山は市街から600m、海抜は2250mとありました。山頂には三台閣という塔楼があり、そこから蘭州を一望すると、山間を流れる黄河に沿って東西に細長く延びる市街の様子が良く分ります。

 3日目は甘粛省博物館へ行きました。展示は、シルクロード、甘粛彩陶、甘粛の古生物化石が中心とありましたが、印象では、マンモスや恐竜の化石が中心のようで、私にはあまり面白くありませんでした。

 蘭州は武漢のように広すぎることもなく、公共バスは全て1元で、どこへ行くにもだいたい30分あれば足りるので、見て回るには手軽な街でした。黄河沿いに公園が多く、公園にはパラソルと椅子をならべた茶店がたくさん店を出していました。茶店のパラソルの下でビールを飲んでいると、涼しい風が吹いてきて、うたた寝をしてしまう程の心地良さでした。確かに、蘭州の夏は、日射しは強そうですが、日陰に入ると涼しくて快適です。

 また、蘭州の街を歩いていて気付かされるのは、回教寺院が多いこと、特に、四隅に細長い尖塔を備えた大きな寺院が街の中心と西部に二つありました。そのせいか、頭にスカーフを巻いた女性もよく見かけます。至る所に牛肉ラーメンの店があり、また、冬虫夏草の看板を掲げた薬局もよく目につきました。季節なのか、クルミ売りが多く、緑の厚い皮か果肉をむくと、かたい殻のクルミが出てくるのを初めて見ました。

 

牛肉ラーメンを食べ歩く

 蘭州の牛肉ラーメンは中国全土で有名で、南京でも武漢でも蘭州牛肉拉面/牛肉面の看板を見かけました。(以下、牛肉面)それで、本場の牛肉面が食べられるのが楽しみでした。実際に、蘭州の街を歩いてみると、いたるところに牛肉面の店があります。中国では、レストランは多いのですが、昼時に軽くお腹を満たす店が少なく、また、日本と違って専門のラーメン屋はだいたい屋台に毛の生えた近寄りがたい店が多いのですが、蘭州では、どうどうとした店構えの牛肉面屋も多く、外国人の観光客でも気楽に入れるのがありがたいと思いました。

 牛肉面は牛の肉や骨と大根を入れて煮込んだあっさりスープに麺を入れ、刻んだ葱と辣椒(ラー油)を加えて食べます。ほとんどの店が牛肉面の専門店で、メニューは牛肉面かスープの無い炒面(焼きそば)/拌面(まぜそば)しかありません。麺はその場で打つので、注文すると太さを聞かれます。毛細とか、二細などと言って頼みます。値段はまちまちですが、3.5元が現在の標準のようです。他には付け合わせに、小皿にもったお新香やサラダが1元、叉焼風牛肉の小皿が35元程度です。ある店で、12元と一番高い牛肉面を頼むと、出てきたのは、普通の牛肉面に、付け合わせの小皿がたくさんついてきただけでした。いろいろな店で食べ比べてみると、素人の私にもスープの良し悪しや、麺の良し悪しがなんとなく分かりました。どうも大々的なチェーン店よりも、老舗の看板を掲げた店の方がおいしいようです。何日か観光で蘭州の街を歩きながら、昼はだいたい牛肉面で済ませましたが、少しも飽きませんでした。

 さて、上述しましたが、97日に職場の蘭州大学楡中キャンパスへ赴任しました。赴任時には案の定、宿舎の掃除や破損個所の修理、電気水道の開設、インターネットの接続などであわただしく過ごしました。最近ようやくキャンパス・ライフにも慣れてきたところです。次回では、楡中キャンパスの模様など報告してみたいと思います。