解説

アールヌーヴォー様式:
 1890〜1910年にかけて全盛期を迎えた建築、工芸の装飾様式。
植物模様や柔軟な曲線を中心に構成されたデザイン。ガラス工芸では、エミールガレが有名。

磁器のアールヌーヴォー様式 (Art Nouveau Porcelain):
 一般的に釉下彩による彩色磁器と結晶釉の磁器のことをいいます。
これは、この2つの近代的釉技がちょうど19世紀末にヨーロッパで開発され、
当時、流行していた芸術様式のアールヌーヴォーと結びついたものと考えられます。
厳密にいうと、ヨーロッパにおいて1888年から1889年ごろいずれの釉技も技術的に可能になり、1890年代にいろいろな窯で、多くの製作が行われるようになりました。
1900年に行われたパリ万国博覧会が陶磁器におけるアールヌーヴォーのピークと言われています。日本においても明治の終わりごろから真葛香山や板谷波山などが精力的に取り組んだ様式。

釉下彩:
 
釉薬の下に色絵付けをする彩色技法。英語でアンダーグレイズ。
他に、オーバーグレイズやイングレイズがあります。

染付:
白色の素地に呉須を中心とした酸化コバルトで絵付けをして、釉薬をかけて焼き上げたもので青に発色します。中国では青花(青華)、英語では、ブルー&ホワイトと呼びます。染付も青色のアンダーグレイズの一種。

ユニカ(デンマーク語:unik、ドイツ語:unikat、英語:unique):
 大きくいえば量産品ではなく、作家物の意。
 ロイヤルコペンハーゲンの場合、作家(ほとんどが絵付け師)のサイン、日付およびワーク番号(ロイヤルコペンハーゲンが公認しているユニカの通し番号)が明記してあるのが特徴です。
 B&Gの場合は、Effie Hegermann-LindenkroneとFanny Gardeが制作した作品には、作家のサイン、日付およびワーク番号(その作家自身よるユニカの通し番号)があります。その他の作家は、1910年頃までの作品には作家のサインと制作年だけが入るようです。その後、量産化されるものもあり、その場合、オリジナル作家のサインは素地に彫られて、型番(アイテム番号)や絵付け番号が付けられ、絵付け師のサインが入ります。この場合は、最初に作られた作品はユニカというより、オリジナル作品と呼んだほうが妥当だと思われます。
 絵付け花瓶やプレートの場合はワーク番号が書かれ、作家(絵付け師)のサインが書かれています。この場合、花瓶の型番号が書かれています。ただし、作家がまだ若い場合は、ワーク番号がないものもあります。その絵付けのデザインが量産化される場合、絵付け番号が付けられます。

パート・シュル・パート(pate sure pate):
 液状色粘土を吹き付けたり、貼り付けたりする技法。 本来は、青や黒の暗色地の器に液状の白のスリップを何度も塗り重ねることによってレリーフ状に装飾する技法。

クリスタルグレイズ(Crystal Glaze)
 クリスタルグレイズは日本語で結晶釉と呼ばれる釉技で、窯変釉の一種です。デンマークのロイヤルコペンハーゲン窯の科学者アドルフ・クレメントが高火度の磁器の上にこの結晶を表現することに成功し、1889年のパリ万国博覧会に出品しています。そして、アーノルドクローの指揮のもとでロイヤルコペンハーゲンは、釉下彩とともに、この結晶釉の硬質磁器に力をいれて1893年のシカゴ・コロンブス博覧会には大量の結晶釉の作品を出品します。この博覧会で、ロイヤルコペンハーゲン窯の結晶釉は大変な人気となり、その後、西欧諸国でロイヤルコペンハーゲン窯の結晶釉は研究され、1900年のパリ万国博覧会では、完成度の高い結晶釉磁器が多く出品されました。一般的に、アールヌーボーの磁器というと、釉下彩による彩色磁器とこの結晶釉の磁器があげられます。これは、この2つの近代的釉技が、ちょうど19世紀末にヨーロッパで開発され、当時、流行していた芸術様式のアールヌーボーと結びついたものと考えられます。また、中国陶磁器の窯変釉を研究していたフランスのセーブル窯も1888年に亜鉛の珪酸塩を使って小さなプラズマのような結晶が現れることを焼成時の失敗から偶然に発見しています。日本でも、このヨーロッパ磁器の流行を受けて、ワグネル直系の研究者である北村弥一郎が明治30年に石川県工業高校で日本人として初めてマンガンによる結晶釉を開発しています。板谷波山は、この時期に石川県工業高校の教師として赴任しており、波山の結晶釉の作品はこの北村弥一郎の開発したマンガン結晶釉です。また、横浜の宮川香山も独自に結晶釉の研究し、その技術を習得しており、いくつか作品があります。
 基本的には、失透釉やマット釉も小さな結晶あるいは微結晶が均一に安定して析出されている高火度釉です。これら釉は、いくつかの基本原料の配合を変えることによってえられます。結晶釉はその結晶が大きく析出したものであり、焼成最高温度時に釉の粘りが小さいほど結晶が大きく析出されるといわれています。

Privat:
稀にロイヤルコペンハーゲンの作品にだけ見られるもので、どこかに説明があるわけではありませんが、 一般に絵師が自分のためにプライベートに制作したものと言われています。 ですから、作家物ではありますが、ユニカではありません。Privatと書かれたのもには、 作家のサインと制作年度がブルーで書かれています。もちろん、ユニカとしての通し番号はありません。
 私は、まだ、名の通っていない絵付師が作家物としてチャレンジして制作されたものと考えています。 ですから、ロイヤルコペンハーゲン社は、ユニカとして公認はしていませんが、 ペインターのイニシャルあるいはサイン(普通はペインター番号)入りで売られたと考えています。 実際、Privatと書かれた物の作家のイニシャルあるいはサインは、 ユニカの作家のような名の通った作家ではありませんので、名前を特定できません。
 しかし、今まで5点ばかりPrivatと書かれた作品を見ていますが、みな非常に力の入った優れた作品です。

ブルー・フルーテッド(花麦藁)& ブルーフラワー(青花):
 ロイヤルコペンハーゲンの染付の代表的なものに、ブルー・フルーテッドとブルー・フラワーがあります。
このフルーテッドの英語の意味は縦溝彫りという意味です。デンマークでは、ムスメド(musselmalede)、ドイツではMuschelと呼ばれ、いずれも縦縞の貝殻を意味します。英語でもmusselは紫貽貝です。
日本では、花麦藁手と読んでいるようで、描かれている模様を指しているようです。
このブルーフルーテッドは、確かにプレートやソーサの内側やカップの外側が縦溝彫りになっております。
面白いことに、マイセンでは、カップの内側が縦溝彫りになっています。